色々な植物を調べていると、学名にssp.とかvar.なんて付いていることがありますよね。
はたまたf.とかcv.なんてものも。
分からなくなってしまいそうなのでまとめてみました(^◇^;)
※名前は後から訳分からなくなるので、購入時点できちんと名札を付けておくことをオススメします(^◇^;)
そもそも植物の名前はどうやって決まるのか
植物の名前は新種を発見した人が好き勝手に決めれる訳ではないようです。
植物については、国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)という国際的な規範に則って決められています。
この規約は6年ごとに開催される会議で改定され、その改訂版は会議の開催地の名前を付けて「〇〇規約」と呼ばれるとのこと。
2021年現在だと、中国の深圳市で開催された内容を反映した2018年の「深圳規約」が最新版。
具体的な規約の全容は省きますが、とーっても簡単に言うと、
① 狭義の学名は属名+種小名で付ける。
② 種小名を分けるほどでもないなら更に下位ランクの名前を付ける。
③ ラテン語で扱う。
他にも、「科」より上位ランクの名前の末尾が決められていたり、先に発表した学名が優先されるなどの決まりがありますが命名としては大きく上の3個のポイントがあるようです。
ルールならば無料で公開して欲しいものです
この規約に則り定めた名前を発表した上で決められるわけです。
属名とか種小名って何? 生物と植物の分類
植物に限らず生物でもそれぞれの種に分類されています。
生物の分類
例えば人間と呼ばれている現生人類は、次のような分類に属しています。
階級 | 階級 (英語) | 分類 | 分類(英語) |
ドメイン | domain | 真核生物 | Eukaryote |
界 | kingdom | 動物界 | Animalia |
門 | phylum | 脊索動物門 | Chordata |
亜門 | subdivision | 脊索動物亜門 | Vertebrata |
綱 | class | 哺乳綱 | Mammalia |
目 | order | 霊長目(サル目) | Primate |
亜目 | suborder | 真猿亜目 | Haplorhini |
下目 | infraorder | 狭鼻下目 | Catarrhini |
上科 | superfamily | ヒト上科 | Hominoidea |
科 | family | ヒト科 | Hominidae |
亜科 | subfamily | ヒト亜科 | Homininae |
族 | tribe | ヒト族 | Hominini |
亜族 | subtribe | ヒト亜族 | Hominina |
属 | genus | ヒト属 | Homo |
種 | species | ホモ・サピエンス | H.sapiens |
亜種 | subspecies | ホモ・サピエンス・サピエンス | H.sapiens sapiens |
長過ぎ(´;Д;`)
上の表の中にある、ドメイン、界、門、綱、目、科、属、種の8つの階級で分類されています。
(大 (magn-)・上 (super-) 、下亜 (sub-)・下 (infra-)・小 (parv-) はこの階級を細分化する時に用いる。また「族」は亜科と属の間をさらに細分化する時に用いる)
ここまでは生物学のお話。
植物の分類
植物についても同様に分類されています。
分類の仕方は色々進化しているようで、被子植物の分類法は現時点では被子植物系統グループ【APG Ⅳ(Angiosperm Phylogeny Group)】にて分類するのがスタンダードのようです。
人気者のグラキリスは以下のように分類されています。
階級 | 階級(英語) | 分類 | 分類(英語) |
ドメイン | domain | 真核生物 | Eukaryote |
界 | kingdom | 植物界 | Plantae |
− | − | 被子植物類 | Angiospermae |
− | − | 真正双子葉類 | eudicots |
− | − | コア真正双子葉類 | core eudicots |
− | − | キク類 | asterids |
− | − | シソ類 | lamiids |
目 | order | リンドウ目 | Gentianales |
科 | family | キョクチクトウ科 | Apocynaceae |
属 | genus | パキポディウム属 | Pachypodium |
種 | species | ロスラーツム | rosulatum |
亜種 | subspecies | グラキリス | gracilius |
グラキリスはパキポディウム・ロスラーツムの亜種なんですね。
属名+種小名【二名法(二命名法)】
狭義の学名は、属名+種小名で決定されます。
これを二名法と呼びます。
ヒトならHomo sapiens。
属名の1文字目は大文字
それ以外は小文字でイタリックやアンダーラインなどで表記するのが正しいみたい
属名は名詞系で種小名は形容詞系をとります。
Homo = 人
sapiens = 知恵のある、賢い
という風に訳すことができるので、意味が分かると面白くなりますね(°▽°)
でもこれだと…グラキリスが表現できない??
属名+種小名+下位分類【三名法(三命名法)】
ここがこのページの本題です。
種小名よりさらに下位分類で命名することを三名法(三命名法)と呼びます。
下位分類とは亜種、変種、品種。
亜種(subspecies)
同じ種でも、地域差などで形態に違いがあるものを亜種と呼びます。
属名+種小名にssp.もしくはsubsp.を付けて表記します。
グラキリスはこういうことになりそうです。
Pachypodium rosulatum ssp. gracilius
変種(variety)
基本種からは形態に違いが見られるものを変種と呼びます。
変種も地域的な偏りが起こります。
亜種と何が違うのかと言うと、明確な住み分けがされていないのが実情のようです。
属名+種小名にvar.を付けて表記します。
品種(forma)
地域特性がなく、基本種との違いも少ないものを品種と呼びます。
例えば花の色だけ違うとか。
属名+種小名にform.もしくはf.を付けて表記します。
園芸品種(cultivar)について
自然に発生したものでなく、人の手が加えられたものを園芸品種と呼びます。
交配や選抜で作られたものです。
属名+種小名にcv.を付けて表記したり、属名+種小名の後に一重引用符で括った「‘〇〇’」と表記したりします。
園芸品種名はラテン語表記である必要がないため、日本語のものもたくさんあります。
Agave titanota ‘白鯨’ とかは有名ですね。
まとめ
学術的な話が多くなりましたが、ちょっとした疑問が解決するとさらにその世界が楽しくなったりします。
趣味で園芸をする上では命名のルールなどは頭の片隅にでもあるくらいでいいとは思いますが(^◇^;)
それでも少しでも知識があると、これから調べる際に色々と見る目が変わってくるかもしれませんよ(°▽°)
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